The Center for Fine Art PhotographyはNPOの写真文化センターみたいなところだ。創立は7年前だそうである。運営費はコンペの応募代、ワークショップの授業料、フォートコリンズ市のファンドからなっているそうだ。
しかし、なぜこのような小さな街にこんなものがあるのだろうか。その辺をディレクターのハミダさんに聞いてみた。フォートコリンズは小さな街だがゆったりしていてゆとりがある。しかもロッキーマウンテンパークや北に行けばワイオミングのような自然が豊かな場所でもある。デンバーからもクルマで1時間という立地。つまり、都市と自然との中間地点にあってファインアートフォトを学んだり鑑賞したりするのにはぴったりというのである。
サンタフェもアルバカーキから1時間半の片田舎だが美しい街だった。しかも全米で3番目にアートが盛んな都市であるという。フォートコリンズもよく似た環境なのだ。
なによりも自然環境に恵まれていて、土地代も安いから、ニューヨークなどの大都市からもアーチストが移住してきて製作の場にしていることも多いらしい。
グーグルやアップル、スターバックスといった新興企業のお膝元は日本で言えば皆地方だ。ダウ平均の会社のなかでニューヨークに本社のある企業はわずか2社くらい、という。新しい発想で新しいことをやるのには土地代も安く、環境もよく、のびのびと働ける場所がいいに決まっている。
実際フォートコリンズに来てみるとその環境のよさに思わず身体がリラックスしてしまう。滞在中はハミダさんの家に宿泊させてもらっていたが、C4FAPまではクルマで5分というところ。それなのに目の前はゴルフ場と湖という立地だ。庭も広くて、ラズベリーやトマトやバジルを植えている。犬が2匹、猫1匹も同居している。若いジャクソン(犬の名前)はハミダさんの留守中はこの広い庭を駆け巡っているので運動不足になることもない。
近くには牧場やBerewry(小さなビール製造所)などがたくさんある。
またダウンタウンは歴史のあるオールドタウンでとてもきれいだ。ディズニーのスタッフが住んでいたそうで、ディズニーランドを作る際に街並みの参考にするので写真を送ったところすぐ採用になったそうだ。つまりディズニーランドの原型となった街ともいえる。
小さな街だが高級レストランから和食、タイ料理までいろいろなレストランもある。コロラドステートユニバーシティもここにあり、若者もたくさん住んでいる。
ディレクターのハミダさんと毎日いろいろな話をするうちに彼女の前の仕事が広告のディレクターであることもわかってきた。わりと保守的なアメリカの写真業界で僕の作品に注目してくれたのも彼女のそうした来歴にも関係がありそうだ。また彼女の父親もアート関係のディレクターの仕事をしていたそうで、家には父親のシュールレアリスムの影響を受けたとおぼしきセラミックアートがたくさん飾られていた。
広告のディレクター時代から世界を旅してきた彼女の発想はとても柔軟だし、毎日を楽しむことにもたけている。今年はサンタフェでのCenterの会議、ポーランドのフォトフェスティバル、ドミニカ共和国への個人旅行にいく予定とうれしそうに語っていた。
帰り際には、じつはThe Center for Fine Art Photographyという名称を変えようと思っている、と話してくれた。スーザン・スピリタスとのコラボをはじめ、ニューヨークのスール・エトワールのコリンヌ・タピアさん、クロンプチンギャラリーのデボラ・クロンプチンさんなどともこれからコラボレーションの予定があるそうだ。彼女らと話していく過程で今の名称が果たして適切なのかどうかが話題になったそうなのだ。
何度も言うようだがアメリカのファインアートフォトの市場はまだ保守的なところがある。ファインアートフォトといえばアンセル・アダムスが先ず頭に浮かぶというのが正直なアメリカの状況だ。しかし、もう時代はあきらかに次へと進行している。C4FAPもどんどん進化をとげようとしているらしい。新しい流れは地方から、がアメリカの定番。
僕も思わず、いいね、それ。フォートコリンズに世界中から新しい写真家が集まってくるようになるといいね、特にアジアからね、とエールを送った。
C4FAPの入り口。娘のせらもレセプションの時は浴衣で登場。通訳のダンさんに折り紙を教えている。
東西タトゥー対決。実は彼は写真家で優秀なC4FAPのワークショップの先生でもある。
近くには牧場がいっぱいあって、子供達が羊や鶏、豚、牛を見たりポニーに乗ったりできる。
Berewryの一つでビールのテイスティング。シンプルなのからギネスみたいな黒ビールまで各種ビールを楽しめる。
ビールのラベルもそれぞれこっている。
土曜日にはハミダさんのお友達で写真家の牧場でバーベキューパーティ。家の地下には写真作品が多数展示してある。庭には特大のビニールプール。実は写真は趣味の領域だそうで、自分の会社のCEOなのだそうだ。
やっぱり金髪の子供はかわいい。娘もさっそく友達になった。
この地方の見本市にもでかけてみた。写真はラマ。豚の品評会や犬のジャンプ競技、ロデオなどが行われていた。
ダウンタウンの中心では毎木曜日には無料のライブ演奏が行われている。僕が行った次の週は街全体で音楽祭が開かれるという話だった。
ダウンタウンの土産物屋。昔はゴールドラッシュにわいた地域だそうで、今でも鉱物資源で有名だそう。僕の個展のポスターも貼られている。
オールドタウンの街並み。
ディズニーランドのモデルとなった建物。
レストランも戸外で食事できるところが多くダウンタウンの中心街はとにかくゆったりとすごせる。
ハミダさんの家の前の湖。
ハミダさんの父君のセラミックアート。
ハミダさんの家の庭は娘の保育園の園庭よりも広い。娘は毎日バッタとりをしたり、ボール遊びをしたりしてのびのび遊んでいた。
ハミダさんの愛犬ジャクソン。
ダウンタウンの高級レストランで娘はチョコレートケーキを注文した。
ロッキーマウンテンパークにはスーザン・スピリタス・ギャラリーの仲間のエイドリアンが家族を伴って案内してくれた。
夏の戸外は30度を超えるが乾燥しているため日陰に入ると涼しい。ロッキーの山頂は雪もあって寒いくらいだ。雪解け水の滝の水もつめたくてきもちがいい。
アメリカではよくリスをみかけるが、シマリスを見かけたのははじめて。他にもハチドリやホーンのある鹿などもみかけた。
2011年8月27日土曜日
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