2014年5月1日木曜日

ニューヨークのフォトギャラリー

さほど広くないマンハッタンを中心としたエリアのなかで老舗ギャラリーが集まる57丁目、大型ギャラリーがひしめくチェルシー、新興のギャラリーがあるブルックリンのダンボ地区、そして新しいエリアとして注目を集めるミートパッキングディストリクトやロウアーイーストサイド、イーストビレッジなどがある。

ニューヨークに行ったらまずICP(インターナショナルセンターオブフォトグラフィー)を訪ねてみよう。ここにもギャラリーがあり、さまざまな写真のワークショップが開かれている。ここでギャラリーのガイドブック Photographyを買い求めると、現在開催中の写真展やギャラリーガイドがエリアごとにでている。
どのギャラリーを訪ねても気軽にはいれるし、写真の値段とエディションはカウンターなどにおかれているカタログに書かれていることもある。
57丁目とチェルシーくらいなら1日あればだいたいまわることができる。余裕があればガゴシアンギャラリーやペース・マッギルギャラリーなどの大手のコンテンポラリーアートギャラリーもついでに訪ねてみるといい。

また写真集専門の本屋さんであるダッシュウッドブックスは必ず立ち寄りたい。運が良ければ写真家のサイン会が開かれていたり、フラクションマガジンジャパンにコラムを書いていらっしゃる須々田美和さんに会えるかも知れない。

(2010年10月取材)

 57丁目のフォトギャラリーはたいがいこうしたビルの上の階にある。

 Howard Greenberg Gallery。細江英公、植田正治、井津けんろう ウイリアム・クライン ダイアン・アーバス ビル・ブラント アンリ・カルティエ・ブレッソン ユージン・スミスといった錚錚たる写真家をあつかっている。
 Amador Gallery
Bonni Benrubi Gallery
Edwynn Houk Gallery
Bettina Rhiemsの作品を展示中。Edition 3~5で22000~32000ドル。
Laurence Miller Gallery
Hasted Hunt Kraeutler.チェルシーのギャラリー
Jeff BarkのLucifer Fallsを展示中。大きさは121x127cm, 127x161cmといった大型作品。Edition は5で14500~24000ドル。売れるのかなと思っていたが、ほとんどの作品が4まで売れていて驚いた。
Bruce Silverstein Gallery
Beyond COLOR. というタイトルでアメリカの50年代から70年代の作品を展示していた。
Julie Saul Gallery
Jeff Chien-Hsing Liaoの作品
Yancey Richardson Gallery.Laura Letinskyの”After All"を展示中。73x104cm, 93x134cm, 104x147cmの大きさでEditionは9のものが5000ドル
Aperture Gallery. Paul Strandを展示中。
Clamp Art
Santa FeやHoustonのレビュアーもつとめる仕事中のBrian Clamp
Sous Les Etoiles The Galleryはソーホーにある。
Soho Photo.ここは月一回レビューをして展示ができる写真家が決まるようだ。
Hei Hot Shotコンペや20x200をたちあげて有名になったJen Beckman Galleryもソーホーの近くにある。
Dashwood Books
Dashwood Booksの店内

デール・カプランさんに聞く

2010年にニューヨークなどのフォトマーケットを取材しましたが、レクチャーや雑誌などに掲載したためブログにアップしていなかった記事を順次あげていこうと思います。

彼女に現代の写真をとりまく状況についてお話をうかがった。


*ニューヨークには写真専門のギャラリーはどのくらいあるのですか。


写真専門のギャラリーは50 ~60軒くらいです。コンテンポラリーアートを扱うギャラリーまで含めれば100軒以上ありますね。
エリアでいえば、老舗ギャラリーが集まる57丁目、大型ギャラリーが集まるチェルシー、新しいギャラリーがあるブルックリンのダンボ地区がありますが新しいギャラリーはホイットニー美術館が移転予定のミートパッキングディストリクトやロウアーイーストサイド、イーストビレッジなどのエリアにも進出しています。


*写真のコレクターにはどんな方がいらっしゃるのですか。


大きく分けるとソフィスティケーテッドコレクターと呼ばれる伝統的なコレクターとヤングコレクターといわれるIT産業などに代表される若くして成功したコレクターがいます。
ロウアーイーストサイドなどにギャラリーが進出しているのはヤングコレクターが台頭してきたせいでしょう。
また今ではインターネットが発達してきたせいでスワンでも世界中からコレクターが訪ねてくるようになっています。


*コレクターは写真やアートのどんなところに魅力をかんじているのでしょうか。


普通たいがいの人はそれほどクリエイティブな生活をおくっているわけではありません。自分でなにかを創造することはなかなかできないのです。決して大きな作品がいいわけでもなく、小さな心に響くような作品でも作家がどんなことを訴えかけたいかが明確であれば、作家の志に共感して作品を購入するようになるでしょう。そしてValue of Life、生きていることの意味や価値観をそこに見いだすのです。


*20世紀はアーヴィング・ペンやリチャード・アベドンといった写真の巨匠を生み出してきました。21世紀の写真界のスターはどんなところから生まれると思いますか。


アベドンやペンはメディアを利用できたのです。20世紀は雑誌などのメディアの力がすごく強かったから。彼らはメディアの力を利用することでとても有名になりました。でもこれからは違うわね。インターネットが発達してきてメディアの影響力は弱くなってしまっています。
今後はギャラリーシステムを通じて写真界の次のスターを検証することになっていくでしょう。ファッション写真家も広告写真家もみんなこのギャラリーシステムにはいりたがっています。

(2010年10月取材/ デール・カプランさんへのインタビューは当時スワンオークションギャラリーで研修をされていた須々田美和さんのご手配によって実現しました。須々田さんが同席してくださり通訳をしてくださったことに感謝いたします。)


 デール・カプランさんはコレクターのためのレクチャーなども行っている。
 スワン・オークション・ギャラリーのDM
 写真のオークションは10月のメイン・オークションの他にも年に数回行われるようだ。