2010年6月25日金曜日

LenscratchとAline Smithson

ブロガーと呼ばれる人たちがマスコミとはひと味違った情報を発信して注目されている時代だ。

写真の世界でも注目すべきブロガーがいる。ロサンジェルスに在住のAline Smithsonさんもそのひとりだ。彼女も写真家だが、以前はニューヨークでファッション雑紙の編集者をしていたそうだ。そうしたキャリアも関係しているのか、彼女のブログLenscratchは今存在するあらゆる写真を網羅しようとするような勢いで更新されていく。

世の中には注目されるべき写真家が数百いや数千という数ほどもいるのかもしれない。Lenscratchをみていると、個々の写真がどうのこうのということをこえて、世の中にはこんなにいろいろな種類の写真があるんだな、という視覚のエンターテインメントにひたすらひたることができる。

例えば、ゴルフボールの断面を集めた写真。そういわれなければ顕微鏡写真なのかな、とも思ってしまうような写真ではないか。どうしてゴルフボールを真っ二つにカットしてみようと思いついたのか。ともかくも、ひとつの価値観や世界観だけに固執しているような人にはこんな事は思いつかない。

http://lenscratch.blogspot.com/2010/06/james-friedman.html

オープンポートフォリオレビューでベストポートフォリオ賞になった原久路さんもどこで知ったのかちゃんと取り上げられている。

http://lenscratch.blogspot.com/2010/04/hisaji-hara.html

僕とセリーンの項もありますよ。

http://lenscratch.blogspot.com/2010/03/celine-wu.html

http://lenscratch.blogspot.com/2010/03/yoichi-nagata.html

Lenscratchは写真好きなら絶対におさえておくべきブログだと思います。

Aline Smithson website


アリーンさんはアメリカのポートフォリオレビューや写真家の事情にもとても詳しい。
渡邉博史さんとアリーンさん。この日は渡邉さんとアリーンさんのオリジナルプリントを交換していた。アリーンさんのプリントは一枚一枚カラーペイント(人着)されたものでとても美しい。

2010年6月23日水曜日

Micheko Galerieオープニングの動画

ここのところ個人的な内容が多くて申し訳ないです。

日本から海外のポートフォリオレビューなどにどうやって参加するのか、ということを具体的に紹介することもこのブログの主旨ですので、僕がモルモットになってどうなっていくか、という事もひとつの重要な情報と思って掲載しています。

Micheko Galerieのオープニングレセプションの模様がユーチューブにアップされていますので、これもご紹介しておきます。

僕がへらへらと日本語でしゃべっている場面やへたくそな英語で挨拶している場面もはいっていて、やたら恥ずかしいの一言なのですが、どこかで見たぞー、なんて言われる前に白状してしまおうと言うことでお知らせしましょう。

なにせこの動画をバイリンガルのセリーンが見たときには、おもいっきりゲラゲラ笑われてしまいました。まあ、それほどひどい、ということでしょう。3月にニューポートビーチのスーザン・スピリタス・ギャラリーを訪ねたときも、スーザンの旦那様のジーンに「英語を勉強した方がいいぞ」とくぎをさされたくらいです。

Micheko Galerieの田中恵子さんには、お願いだから英語の部分ははずしてください、と頼んだのですが、この日の主人公は永田なので、下手な英語は問題じゃない、ということになりました。
もう海外に出たら、くそ度胸で行くしかないのでしょう。

この先日本から海外にデビューする写真家がどんどんでてくるでしょうから、なんだ、あんなひどいのもありなのか、という踏み台にしていただければありがたいと思います。


Micheko Galerie München - Vernissage japanische Fotografie

2010年6月21日月曜日

PX3、海外のコンペについて

日本の写真家が海外市場をめざすなら、まずは海外のポートフォリオレビューに参加するのがてっとりばやい。それと同時に多数のコンペが海外には存在するので、コンペにまめに応募する事も必要になるだろう。

正直言って僕はコンペに応募するのは大の苦手である。写真に目覚めた頃にある日本のコンペでサム・ハスキンスをそっくりまねた作品が賞を取っていたのを見て、大のコンペ嫌いになってしまった。冗談じゃないよ、こんな写真が賞を取るんじゃ、賞なんてものはたかがしれている、と思い込んでしまった。 コンテストの審査員を見て、審査員の好みに合わせた作品を応募するなんて言う傾向も当然あるだろう。これも僕はあまり好きじゃない。

まあ、でもですね、しょせんは人間が人間を正しく評価するなんて事はできない相談だ。と割り切って応募していくしかないよね。

昨年から、なるべく海外のコンペには応募するようにしているのだが、アメリカはまずなかなかひっかからない。僕の場合はヨーロッパの方が少し歩がいいようだ。
昨年のPX3にHonorable Mention(入選)を2個とったのと、Lucca digital photo contestでのファイナリストがやっとこさ、だったが、今年のPX3では、FineArt/People 部門のSecond Placeをいただいた。

PX3は部門別が多いのでチャンスも多くなる。
まあ、よかったよかった。

アメリカのCenterの主催するコンペでは、各部門別に”あなたは第3回目のフィルターまで進み全体の7%まで残りました” なんて言うメールが送られてくる。応募ありがとう、今回は残念ながら選ばれませんでした、という素っ気ないメールよりは、次回がんばろうかな、という気にさせるではないか。 欧米ではものすごい量のコンペがあるので、それぞれ工夫して応募をたくさんもらえるように努力しているわけですね。

闇雲に応募していってもお金がかかるだけなので、審査員もよく吟味して自分にあいそうなコンペをみつけましょう。

2010年6月19日土曜日

マンフレッド、ベン、ミュンヘン

今年はドイツと縁があるようだ。

昨年アルルでレビューしてもらったManfred Zollnerさんは現在ハンブルグでお仕事をされているのだが、出身はミュンヘン。ということで、週末はミュンヘンに戻ってくる、という。連絡したら、Micheko GalerieのMicheleさんのお宅と一駅の距離にお宅があるということで、自転車にのってブランチにやってきた。なんとものどかなミュンヘンの光景。こんなかんじで人がつながっていくのがおもしろい。

ManfredさんはさっそくfotoMAGAZINのオンラインウェブで僕の作品と展覧会の紹介をしてくれた。

fotoMAGAZIN写真展情報
fotoMAGAZIN作品紹介


僕のウェブサイトを見てコンタクトしてくれたベルリン在住の写真家Ben FueglisterさんはPiclet.orgというサイトを運営していて、個人的な見解から好きな写真家のリストを作っている。こういうサイトも面白い。
Benさんはヒューストンで知り合ったレビュアーで写真家兼ヨーロピアンフォトグラフィーという雑紙を運営しているアンドレアス・ミューラー・ポールさんとも知り合いだった。まあ、写真の世界はせまい、ということだろう。

Piclet.org

アンドレアスさんからは、ミュンヘンはどちらかというとドイツじゃなくてババリアだ。今度来るときはベルリンにおいでよ、というメールをいただいた。 ドイツも地方によっていろいろと文化の違いがあるのだろう。ヨーロッパはこういう地域による文化の違いが激しいところだ。ひとつの国といえどもいろいろな人種と言葉がまじりあっている。

Andreas Mueller Pohle

Equivalence

ミュンヘンはドイツの中ではとても豊かな地域だそうだ。街の中心街であるマリエンプラッツは条例で高層ビルがなく、のどかな雰囲気で観光客も多い。地下鉄、トラム、バスが発達しているので歩き回るにもすごく便利。 Micheko Galerieがあるテレジアンシュトラッセの界隈には、アルテ・ピナコテック、ノイエ・ピナコテック、ピナコテック・モダンなど4つの大きな美術館があって、ヒエロニムス・ボッシュ、ブリューゲル、クラナッハ、クリムト、エゴン・シーレ、印象派、アンディ・ウォーホール、デヴィッド・ラチャペルまでと行った古典から現代までのアートを楽しむことができる。

冬に行けば全てが真っ白になっているというくらいに寒い印象のあるミュンヘンだったが、僕が行った数日間は気温が最高30度を超えるような陽気だった。寒いのが大嫌いな僕をミュンヘンはあたたかく迎えてくれたわけで、ますますドイツに対する印象がよくなってしまった。

マリエンプラッツの広場の中心
ミュンヘンは自転車族が多い。歩道には自転車専用レーンがある。スカートを翻して颯爽と自転車にのる女性も多くて、思わず「突然炎のごとく」の自転車のシーンを思い浮かべてしまう。おばさまの自転車族もなんだかかっこよく見えた。
公園の中にあるビアガーデン。食べ物は持ち込みでもいいそうで、ピクニックのようなかんじで集まってきてビールを飲んでいる。

手にずっしりと重いビール。
プレッツェルのパン。
このビアガーデンの名物のスペアリブ。うまい。

2010年6月12日土曜日

Micheko Galerie

ドイツのミュンヘンにオープンしたMicheko Galerie (ミケーコギャラリーとよぶのだそうだ)のこけらおとしの写真展を僕とCeline Wuの二人展で飾らしていただくという光栄なお役目をいただいた。

4月ころからあわただしく準備作業をして、プリントもぎりぎりでどうにか間に合った。ギャラリーの方もオープンぎりぎりまであれやこれやの準備で大忙しだったが、なんとかオープニングレセプションまでこぎつけ、大勢のお客様にお越しいただくことができた。
Micheko GalerieはMichele Vitucciさんと田中恵子さんが運営されるアジアのアートを専門に紹介するギャラリーとしてオープンした。アジアのアートに特化したギャラリーはドイツではめずらしいそうである。

当面の展示は写真が中心になるようで、今年は池谷友秀さん、宮原夢画さんの写真展が続いて行われる。

オープンするまでにパリフォトに出かけられたり、写真集をリサーチしたり、ネットで調べたりとあらゆる考え得る方法で所属してもらうアーティストをさがしたそうなのだが、ネットでのリサーチが案外大変だったという。というのも、日本の写真家で自分のウェブサイトを持っている人が少なかったり、あっても文字化けしてしまってよく読めない、メールでコンタクトしても変に身構えてしまわれたりするアーティストの方もいて、オープンにこぎ着けるまでに大変ご苦労されたということだ。

ヨーロッパのギャラリーとのつきあいは案外むずかしいところもあるようで、慣習や考え方の違いもあるのだろうが、支払いのトラブルなどもある、といわれる。著名な写真家の方でも支払いのトラブルを避けるために写真を預けた時点で先払いで支払ってもらう(キャッシュオンデリバリー)ようにしている、という話も聞く。

Micheko Galerieは田中恵子さんという日本人の方がいらっしゃるので、日本のアーティストにとってはコミュニケーションや考え方がわかりやすいのがとても利点になるだろう。
ドイツ人とイタリア人のハーフであるMichele Vitucciさんもストックフォトエージェンシーを長年経営されていた方なので写真に対する考え方がとてもクリアだと思う。
お二人の考え方も滞在中にじっくり聞かせていただくことが出来たが、写真家に対しても顧客に対してもとても誠実な考え方を持っていらっしゃる。

日本の写真家にとってはヨーロッパに対して大きな窓が開いたといえると思う。すでに来年の展覧会の予定もほぼ埋まってしまっているようで、今後の展開が楽しみだ。

Micheko Galerie








左から田中恵子さん、Michele Vitucciさん、と永田。

2010年6月4日金曜日

冬青社

冬青社の高橋国博氏とお会いして、日本の写真のことやポートフォリオレビューのことをお話する機会を得た。

高橋さんは日本の1960年から1995年までの写真家を積極的に国内外に紹介されている。北井一夫、土田ヒロミなどに代表される写真家たちだ。

高橋さんとお話ししていてかんじるのは、純粋に写真が好きな方だということ。この一年ほどの間に海外のフォトフェスやレビューに参加して感じたのも、世界には純粋な写真好きが大勢いる、ということだ。名刺にPhotophilia(写真大好き人、写真中毒になるほど写真好き、といった意味だろう)と書いてある人もいるくらいだ。

高橋さんは今年の東川写真フェスティバルでポートフォリオレビューをするそうだ。僕も今年は東川に行こうと思っている。

高橋国博のブログ「目」

今日は冬青社ギャラリーでオサム ジェームス 中川さんのトークショーがある。ヒューストンでボランティアの方に紹介されてわずかな時間立ち話をし、もっとお話してみたいと思っていた方なので再会できるのが楽しみです。

引っ越し、ミュンヘンでの写真展の準備などで、まだアップできていないヒューストンフォトフェストとミーティングプレースのレポートはなんとかミュンヘンから帰ってきて6月中にはアップしたい。

とりあえず、ヒューストンの街中に掲げられていたフォトフェストの旗と、創立者のフレッド・ボールドウィン、ウエンディ・ワトリスご夫妻のスナップをあげておきます。ぜひご期待ください。

2010年6月1日火曜日

ギャラリー21

6月1日(今日)から始まるギャラリー21でのグループ展の展示のためのセリーン・ウーの作品を染め刷り師の木田俊一さんの仕事場に昨日受け取りにうかがった。ミュンヘンで展示するための掛け軸の作品もできあがっていた。

セリーン・ウーの作品は全て和紙にプリントされている。インクジェットプリントが盛んになってきて、インクジェットプリント用の用紙はものすごく多様な展開をしているし、和紙もたくさんの種類がある。ただインクジェットプリント用の和紙はたいてい表面にインクジェットのインクの発色をきれいにするためにコーティングがほどこされている。

木田さんは和紙の風合いとインクを和紙のなかにしみこませるためにわざとコーティングを施していない和紙への刷りを試みている方だ。僕たちのように銀塩写真のプリントになれて
いるものからみると最初は木田さんの和紙プリントはねむいかんじがして、ダメプリントのようにみえてしまう。それが、だんだん目がなれてくると、なんともいえない柔らかいトーンとテクスチャーがみえてくるようになる。
またカラー作品だと、発色が通常のインクジェットプリントとは全く違うので仕上がりを前にして、この発色でOKなのかどうか大いにとまどうことになる。

木田俊一ウェブサイト

僕のSkyEarth the Last Paradiseも掛け軸に仕立てた作品を作ったのだが、このときもたくさんの和紙の種類でサンプルを作ってみた。
結局最終的に、第9代目人間国宝岩野市兵衛さんの手漉き和紙を使うことにした。セリーン・ウーの作品も全てこの和紙でプリントされている。


写真のプリントになれているものの目から見ると、
市兵衛さんの和紙に刷られた自作を見るとかなりの戸惑いを覚えることになると思う。それが不思議なことにだんだん目がなれてくるとその独特のトーンとテクスチャーがなんとも心地のよいものに感じられてくるのだ。

お台場にあるギャラリー21の回廊の展示スペースはいつみてもすばらしい雰囲気がある。坂川栄治さんのこけらおとしの写真展以来この空間は日本の中でも指折りの写真展会場として君臨している。セリーン・ウーの和紙プリントもとてもよくマッチしているように思えた。

ちょうど西山功一さんも展示の準備でいらっしゃっていたので、少しお話しする機会を得た。西山さんの作品はオープンポートフォリオレビューではよく見ることができなかったので、今回まとまった作品を拝見したわけだが、撮影条件の光に対するこだわりが明確で、写真という世界の成立条件がひとつの作品コンセプトにもなっているように思えた。とても気持ちのいい作品である。初期の畠山直哉さんの作品にも共通点があるように思えたので、そのことを質問したら畠山さんに見てもらってとても喜ばれたということだった。

西山功一ウェブサイト


とにかく横浜でのオープンポートフォリオレビューがこうした形で実を結んでいることがとてもうれしい。まさに僕が夢見た世界だ。


オープンポートフォリオレビューにレビュアーとして参加していただき、すばらしいかたちでコレスポンダンスしてくださった太田菜穂子さんにはお礼のいいようもないほどに感謝の気持ちでいっぱいである。

ギャラリー21