2011年5月21日土曜日

ミーティングプレースの成果は?

さて、わざわざ日本人にはあまりなじみのないヒューストンまで出かけていってポートフォリオレビューを受ける意味合いはどれほどあるのであろうか。

人によってさまざま、としか言えないだろうと思う。僕も,見てもらったレビュアーからの具体的な話は特になく、てごたえはあまりなかったように思う。ヒューストンフォトフェストというものがどういうフェスティバルなのか、とにかく見てみなくてはという思いが強く、創立者のフレッド・ボールドウィンさんとウェンディ・ワトリスさんご夫妻に話しをうかがい、ヒューストンという街の写真展を見て歩き、再会したレビュアーと話をしたり,新しく知り合った写真家やレビュアーと食事をしてうちとけたり、という時間をすごした。

ただ、フローティングレビュアーとして参加していたThe Center for Fine Art Photography(略してC4FAP)のディレクター、ハミダ・グラスゴーさんと知り合って、僕の写真を気に入ってもらうことができた。それからC4FAPのコンペに応募したり、個展のプロポーザルをしていく過程で、今年の7月から個展を開くことが決まった。時間がかかったので,ミーティングプレースの成果としての認識が薄かったのだが、C4FAPのフェースブックのファンページで改めて言われてみて、そうだったのだな、と感じる。

アメリカの写真家達もそうなのだが、とにかくコツコツとポートフォリオレビューに参加し,グループ展に参加し,自作のプロモーションを続けながら新作をとっていくという作業をし続ける他はない。

The Center for Fine Art Photography facebook


ヒューストンミーティングプレース

2010年のミーティングプレースの募集は2009年の7月だった。ミーティングプレースはヒューストンフォトフェストの期間中のメインイベントになる。
フォトフェストは2年に一度のお祭りなので次回は2012年。今年の募集は6月1日からということで2009年よりも早くなった。

ミーティングプレースは4つのセッションのコースがあり、それぞれレビュアー陣が異なる。参加したい写真家はまず、応募してから抽選結果を待つことになる。参加出来ることになったら、どのセッションに参加するかを決めて参加費を振り込めばミーティングプレースへの参加が確定する。
一つのセッションに参加するレビュアーは約50人位。参加が決まると,見てもらいたいレビュアーの順位を1〜25番までつける。
2010年のセッション1では18名のレビュアーに見てもらうことになった。4日間で1日4人から5人のペースのレビューをこなすことになる。
2010年の参加費は820ドルだった。円高がいつまで続くかわからないが、ともかくも今は日本から参加することは円高の恩恵がある。

正規のレビュアーの他にもフローティングレビュアーというレビュアーがいてレビューの合間にもそうしたレビュアーにみてもらったり、次のセッションに参加するレビュアーがいるのをみつけて、みてもらったりすることもできるし、セッションの終わったあとにも人気のあるレビュアーに並んでみてもらうこともできる。

その他にもセッションとセッションの間の日程にマリー・ヴァージニア・スワンソンなどのワークショップも用意されている。2010年の時はスワンソンのワークショップで写真家のプロモーションにウェブをどう使うか,というテーマでおよそ1日の長いワークショップが開かれた。

ポートフォリオレビューが終わると、参加した写真家はバスツアーでヒューストンの街の各所で開かれている写真展のレセプションやパーティなどをみてまわることができる。そのあとは,市内のレストランの集まっている場所におろしてくれて、そこでディナーをとることになる。アメリカのたいがいの都市のようにヒューストンもとても広い街で移動の手段はクルマなのでこのバスツアーに参加することで効率的にフォトフェストを楽しむことができるようになっている。

開催場所はダブルツリーホテルの会議室で、参加する写真家もレビュアーもたいがいここに宿泊することになる。ディナーから帰ってきたあともホテルのロビーやバーでレビュアーと写真家が具体的な仕事の話をしたり、談話をしたりとレビューのある期間はほんとうに忙しい。

ヒューストンへのアクセスは,サンフランシスコ経由かロサンジェルス経由になる。僕の場合は夕方便で出発して同日の夕方にヒューストンに着いた。サンタフェのようにアルバカーキからバスで移動というようなことはないのでアクセスは比較的楽だと思う。


最初のセッションの前日にはウェルカムパーティが開かれる。
参加する写真家はこのネームタグをつける。
レビューの交換を求めるボード。
レビュアーの机の番号を知らせるボード
レビューの時間は8時30分から12時30分までと1時15分から4時45分まで。
会議室の前にはブックショップが出来る。

ここでも写真家同士でお互いのポートフォリオを見せ合う。
プラネットアース展に一緒に参加することになったElain Duigenan。
レビュー風景。


ニューヨーク、チェルシーのギャラリスト、ブライアン・クランプ
ニューヨーク、チェルシーのギャラリスト、ウィリアム・ハント

大きい作品を見せるスペースも用意されている。

マリー・ヴァージニア・スワンソンのレビュー
サンタバーバラミュージアムのキュレーター、カレン・シンシャイマー
ヒューストン・ミュージアム・オブ・ファインアートのキュレーター、アン・タッカー。僕はよく知らなかったのでみてもらわなかったのだが、あとで川田喜久治氏から、彼女が川田氏の最大のコレクターだという話を伺って悔しい思いをした。
カナダの写真家。川田喜久治氏を信奉している。写真の感じも、なるほどと思わせるトーン。海外の写真家で川田氏の影響を受けた人をはじめて見た。
韓国の写真家Yi Hyuk Jun.
北京の写真家。Peikwen Cheng
スーザン・スピリタス・ギャラリーの人気作家であるスーザン・バーンスタイン。彼女は現在知名度もあるし、作品も売れているが、それでもポートフォリオレビューに参加して新しいマーケットを開拓し、アートフェアにも出かけていって自らの作品解説をコレクターに熱心にする。他の写真家には気軽にアドバイスをすることにも熱心だ。渡邊博史さんも彼女の姿勢には頭が下がる,といっている。
一般の人に公開されるオープンポートフォリオナイトもある。

地元の中学生か。熱心に見ている。
志鎌猛さんはフォトフェストのディスカバリーという新人の写真展に前年参加して招待されての参加。プラチナプリントの作品にひきつけられている人がたくさんいた。

ピンク&ブルーの作品が有名な韓国のJeongMee Yoon
レビューサンタフェに参加していた写真家も多く見かけた。たいがいウエストコーストの写真家なので、フォトLAでも再会して顔なじみになっていく。

2011年5月20日金曜日

ヒューストンミーティングプレース募集開始が始まります。

おそらく世界最大規模のポートフォリオレビューなのだと思いますが、テキサス州ヒューストンで行われるミーティングプレースの応募募集が6月1日から始まります。

ポートフォリオレビューの期間は2012年3月16日から4月3日までです。4つのセッションに分かれていて、一つのセッションでだいたい16人くらいのレビュアーにみてもらうことができます。参加費は800ドル位だと思います。参加する写真家もおよそ500人ということです。

審査はなくて、申し込めば抽選によって参加の是非が決まります。ウェイティングリストになったとしてもキャンセルも多いと思うので待っていれば参加できる可能性はかなりあるのではないでしょうか。まずは申し込んでみることだと思います。

2010年の日本からの参加者は志鎌猛さんとCeline Wuと僕だけだったのではないかと思います。韓国や中国からはかなり多くの写真家が参加していました。そういう意味でもチャンスは多いと思います。

Foto Festのウェブから申し込みができます。またメールを登録しておけばお知らせがきます。

http://www.fotofest.org/2012biennial/portfolioreview/

2011年5月16日月曜日

チャリティだから写真が売れたのか

5月14日と15日の2日間六本木アクシスビルで東日本大震災復興支援プロジェクト「写真家のチャリティ写真販売」と題されたプリントチャリティー販売が開かれた。上田義彦、操上和美、鋤田正義、長島友里枝、森山大道、若木信吾などの写真家のオリジナルプリントが1点3万円で販売された。主催は,アクシスギャラリーやゼラチンシルバーセッションなどとなっている。
僕は出品者の一人である舞山秀一さんからメールのお知らせをいただいた。そのメールには展示されている作品は売れ次第持ち帰りとなるので,遅くくると写真がないってこともありますのであしからず。とあった。
買うかどうかは別としても早めに行った方が良さそうだなと思い、14日の12時半頃に到着した。11時からだから開始1時間半後ということになる。なんと驚いたことに有名作家のものはその時点では殆ど見あたらなかった。展示作品はおそらく半分以下になっているようだった。

それでもふっと見慣れた渡邊博史さんの作品をみつけてあわてて購入。バーゲンセールの会場にいるような焦りの気分になりますね、こういう状況は。

会場にいらっしゃった舞山さんにお聞きしたところ、なんとなんと前日夜8時から並んで待っていた方がいたそうだ。開場1時間前には俳優の蒼井優さんも並ばれたとか。あまりに並んでいたために予定より15分早く開場したという。出品作家に広告写真家も多く、口コミも有効に作用したのだとも思うが,大変なことだと感じた。

東日本大震災は日本人の意識を揺さぶり義援金や義援金付きの商品もよく売れているという。この写真チャリティーも義援金というファクターも大きな要素となっていることは間違いない。

ただプリントを買いたい人これだけ集まったということの底のところにあるのは,やはり消費行動の大きなパラダイムシフトがあると思う。モノからココロへの消費の流れ。単なるプロダクトよりもココロを豊かにしてくれる商品やサービスにお金を使う,という流れがあるのだと思うのだ。


額付きで飾ったあった作品を額なしで買うこともできるし、買った作品をその場で額装してもらうこともできる。その作業をしてもらうための行列。

売れるとどんどん外されていくのですかすかになっていく壁。

2011年5月11日水曜日

羽良多平吉さん

誠文堂新光社からでている「アイデア」の羽良多平吉特集がすごい。雑誌や本のエディトリアルデザインでここまでのことができるのか、ともう感心するしかない。
「Heaven」や「WX-ray」(ダヴレクシーと読む)など今見るとすごいエネルギーを放っている。「WX-ray」は実家の屋根裏にあるかもしれないが、引っ越しの時になくした可能性もあるなぁ。羽良多さんもおっしゃっていたが、今では古本屋ですごい高値がついてご本人にも買えないそうである。

羽良多さんはタイポグラフィーをものすごく重視すると、この本には書いてある。おそらくこういうことなのじゃないか。つまり僕らは文章の中身よりもどんな書体でその文章が書いてあるか、ということによって感じ方や考え方を左右されてしまいやすい。外見やスタイルといったものは中身よりもよりコミュニケーションにおいて伝える相手を支配してしまう、ということなのではないか。
このことは人に何かを伝える、ということを生業にしている僕たちにとってもとても重要な問題だと思うのだ。
自分の思いを伝えようとするときに,伝える内容をどんな装いにさせればいいのか,を考えることは写真家にとっても大事なテーマなのだろう。そう、ひょっとしたら中身よりも重要なことかもしれない。

さて、僕も「アイデア」羽良多平吉特集に写真家からのコメントを寄稿せよ、との依頼をうけて「きらきら輝くみちしるべ」という一文を寄せています。ぜひ書店で手に取ってみて下さい。


福福星クロージングパーティにわざわざ伊豆からかけつけてくださった羽良多氏。感謝感謝。しかも、福福星シリーズを本にするときは僕がやってあげるよ、とぼそっとつぶやかれた。写真集は海外で作りたい、と思っていたのがこの一言でぶっとんでしまった。

楽しみな今年のReview Santa Fe

PHOTGRAPHER HALさんと最初に会ったのは福福星シリーズを撮影しているTokyo Decadanceの会場だった。その後フォトグラファーズサミットでもたびたび会うことになった。
3月に、HALさんから今年のレビューサンタフェに参加出来ることになったのだけれど,参加するかどうか迷っている,という相談があった。レビューサンタフェは事前審査のあるレビューで、選ばれた100人の写真家しか参加できないレベルの高いレビューである。2009年に僕が参加したときは、ウェイティングリストからくりあがっての参加だった。彼はストレートに審査に受かったのだ。そりゃー,ぜひ行くべきでしょう。とにかく借金してでも行く価値があるからと背中を押した。

先日、新宿ニコンサロンでHALさんの新作の写真展のオープニングパーティが開かれた。この新作を持ってレビューサンタフェにのりこむわけだ。新作は44inchサイズのペーパーにプリントした大きな作品だった。案内のポストカードで見せてもらったときはそんなに感じなかったのだがこのサイズで見ると、おおー、いけるかもしれないぞ,と感じた。昨年ニューヨークに行ったときにチェルシーなどのギャラリーで展示しているコンテンポラリーの写真作品はみな大きなサイズだった。まあ、大きなサイズがニューヨークのトレンドといってもいいように感じた。もちろん値段も高い。エディションは3~5。
HALさんのこの新作がチェルシーのギャラリーにあっても全然不思議じゃない。Centerのサイトで今年のレビュアーを調べてみるとチェルシーにあるJulie Saul Galleryがでていた。それに今年はMOMAのディレクターもレビュアーで参加する可能性があるという。

今年はさらにCritical Mass 2010で見事Top 50に選ばれた保坂昇寿さんも参加する。日本在住の写真家が二人も参加するのははじめてのことだと思う。

今年のレビューサンタフェでどんなことが起こるのか、本当に楽しみなことだ。