2009年6月30日火曜日

フォトアライアンスとアワワールドポートフォリオレビュー

サンフランシスコ在住の兼子裕代さんからサンフランシスコで開かれるポートフォリオレビューのお知らせが届きました。

以下は兼子さんから届いた文章をそのまま掲載します。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------

サンフランシスコ・ベースの写真オーガニゼーション、フォト・アライアンスを紹介をします。
その歴史は比較的あたらしく、2002年に写真家リンダ・コナーが創設しました。

以来、ほぼ一月に一回のペースで、国内外の著名な写真家及び新進の写真家のレクチャーシリーズを勢力的に企画しています。
過去のレクチャーシリーズには、Stephen Shore、Martin Parr、Joel Sternfeld、Emmet Gowin、Alec Soth、Susan Meiselas、Terri Weifenbach、Bill Owens、日本からも、
細江英公、畠山直哉などが名前を連ねています。また、メインのレクチャーの前に、新進の写真家によるプレゼンテーションも行われていて、主にカリフォルニア在住の若手写真家を知る良い機会ともなっています。
毎回、レクチャーの前後に軽いパーティが開かれ、作家との交流が可能なことも楽しみのひとつです。

リンダ・コナーはニューヨーク生まれ、ロード・アイランド・スクール・オブ・デザインとイリノイ・インスティチュート・オブ・デザインで
Harry Callahan、Aaron Siskind、Frederick Sommerなどから写真を学んだのち、写真家として活動する傍ら、69年から現在に至るまでサンフランシスコ・アート・インスティチュートの写真学科で教えています。
長いキャリアと人柄からか、写真界での顔の広さは驚くべきものがあり、彼女の人望によりこのレクチャーシリーズが実現していると言っても過言ではないように思います。

リンダ・コナーのサイト

フォトアライアンスはレクチャーの他に、年に一回のポートフォリオレビューを3年前から行っています。
サンタフェ・センターやヒューストンのレビューよりは歴史も浅いし、規模も小さいとは思いますが、会場がサンフランシスコ・アート・インスティチュートということもあって、学内のカフェテリアで朝、お昼ご飯をケータリング(一部、主催者やボランティアによる手作り!!)するなど、アットホームで和やかな雰囲気があるように思います。

とはいえ、イースト・コーストやアメリカ各地の主要な写真関係者をレビュアーとして招待し、スポンサーや関係団体からの賞やスカラシップも年々充実してきているようですし、作品をプロモートするとても良い機会となる可能性も高いと思います。

参加希望者は前もって作品のサンプルを送り審査を受けた上で参加の是非が決まるので、一定のレベルをクリアした写真家たちですが、先に述べたように、比較的小規模、フレンドリーな雰囲気などから、このようなイベントに初めて参加する人には最適のレビューと言えるかもしれません。

アワ・ワールド・ポートフォリオレビューのサイト

兼子裕代

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------

2009年のポートフォリオレビューは3月13日から15日までの3日間開かれました。事前審査の締めきりは2月13日。

参加できる写真家は50人なのに対してレビュアーは45人と恵まれたレビューだと思います。

日本からも行きやすいサンフランシスコでの開催というのも魅力の一つでしょう。来年のレビューに日本からの参加者がでるとうれしいですね。

2009年6月14日日曜日

レビューサンタフェに参加しよう!

レビューサンタフェを主催するCenterのスタッフLaura Wzorekさんにレビューサンタフェのことについていくつか質問をしてみた。

CenterはNPO なので、レビューサンタフェなどのイベントは参加費と行政からの援助によって運営されているのだそうだ。

レビューサンタフェのミッションは、写真家たちにより多くの観客に作品を見せて、批評、批判してもらってフィードバックをもらうことにより自分の作品について話すことになれていって欲しいというのがまず最初の目的だそうだ。

そして、他の写真家と交流をしたり、写真業界にどんな人たちがいるのかを知ってもらいたいというのも重要な目的の一つ。

そしてこのレビューの結果として、展覧会が決まったり、作品が売れたり、出版が決まったりという成果もしっかりと出ているそうだ。

レビューサンタフェは2001年から始められたそうだが、参加する写真家の審査を始めたのは2005年からということだ。最初はちょっとお高くとまっているんじゃないか、とか批判も多かったのだそうだがそれもだんだんと審査のメリットである参加してくれたレビュアーが質の高い作品を見ることができるという保証があることで次第に解消していったそうだ。
また、審査をすることで審査する人のフィルターがかかってしまうのではないかという懸念を解消する手段として審査する人は毎年変えている、ということだった。

もちろんレビューサンタフェはアメリカ以外の国の写真家にも広く開かれているイベントであって海外からの参加はいつでも大歓迎だそうである。

日本の写真家にとって、一番の問題は言葉の壁だろうと思うが、近親者に英語が出来る人がいればLodge Santa Feはツインルームなので二人でいっても宿泊費用は同じだ。サンタフェには日本語の通訳はいないのだが、アルバカーキにはいるかもしれないという。Centerもアルバカーキあたりで通訳がいないかさがすことのお手伝いはできるだろう、ということであった。

ただし、Centerのスタッフはほとんどボランティアでフルタイムではないのでメールでの連絡のレスポンスははっきり言って悪い。連絡を取るときはねばり強くゆっくりやることが必要だ。

サンタフェセンターホームページ

サンタフェのシンデレラガール

今年のレビューサンタフェに参加した写真家のなかでもHiroyo Kanekoさんほどラッキーな人はいない。

彼女はサンタフェで2年に一度選ばれるSanta Fe Prize for Photographyの2009年のウイナーである。

このプライズは2003年から始められていて、最初のウィナーはアレック・ソス。

彼女は現在サンフランシスコ在住の写真家で、漢字で書く
と兼子裕代さんだ。
日本でも写真の仕事とライターの仕事をしていたそうで、アサヒカメラなどにも執筆していたという。その後サンフランシシコ・アート・インスティテュートで2年間勉強しなおしてアメリカで写真家としての本格的なキャリアをスタートさせた。

サンタフェのプライズはRaiko Photo Centerのディレクターが応募してくれていたものだそうで、推薦方式のノミネートだという。アメリカ全土から100人弱の写真家がノミネートされるそうだ。
彼女も、エー、そんなのにノミネートされたんだー、と友達と話し合っていたというがまさか自分がプライズをとれるとは思っても見なかったという。
そして今年の審査員はシャーロット・コットンである。

このプライズを取った人はレビューサンタフェにも参加料を免除されて招待される。アゴアシは自分持ちだが、7万円ほどもする参加費を免除されることは
彼女にとってとてもありがたいことだったという。

彼女のポートフォリオレビューの参加は今回が2回目。サンフランシスコで行われるPhoto AllianceのOur World Portfolio Reviewというのに一度参加したことがあるそうだ。このレビューも事前審査のあるレビューのようだ。

プライズを取った彼女の作品はSentimental Educationと題された彼女自身の家族が温泉に入っているシーンを4*5で撮影したシリーズである。

日本人には江戸時代から浮世風呂的なみんなでお風呂に入って、そこがコミュニケーションの場所になる、という伝統のDNAがきざみこまれている。

僕も本人がどんな人かすごく興味があったのだが、本人はいたっておっとりしてのんびりとした性格の人だった。レビューサンタフェはみんながフレンドリーに和やかに進行していたとはいえ、レビュー自体は分刻みなので参加者はかなりの緊張とストレスにたえなければならない。

レビューはどんな感じ?と彼女に聞いてみたら、なんとサンタフェとサンフランシスコに1時間の時差があることもあって、最初のレビューに遅刻してしま
ったという話である。主催者から携帯に電話があって、どこにいるんだ、という連絡がありあわてて会場に急行したそうだ。
おっとりマイペースの彼女にはレビューの分刻みの進行はどうも苦手な領域らしいのだ。ポートフォリオレビューに参加するのはこれが最後かもしれないなー、とため息を漏らしていた。

おいおい、そんなことでどうするんだ、これはすごいことなんだよ、このチャンスにどんどんのっていかなきゃ、とむしろまわりにいる僕たちのほうがやきもきしてしまうくらいなのである。

彼女がこれからどんな写真家になっていくのか。日本でどんな風に彼女のことがとりあげられていくのか。


ぜひ彼女のおっとりとしてマイペースな性格をくずさないようにしながら成長していってもらいたいと感じたのだった。


Hiroyo Kanekoさんホームページ



Flak Photoのアンディ・アダムズ氏も熱心に兼子さんの作品を見ていた。

Mary Virginia Swansonさんのこと

ポートフォリオレビューのレビュアーの立場というのは写真家をマーケットに送り出すという役目をになっている人が多い。そのためにその写真家が自分がマネージングするマーケットに適しているかいないか、という判断が常に写真を見る目をきびしくする。

スワンソンさんの立場はそんな大半のレビュアーとは全く異なる。

彼女は写真家のコンサルタントだ。つまり写真家がどのようなゴールを目指しているかをとらえて、どうやったらそれが実現できるかをアシストするのが彼女の仕事なのだ。徹頭徹尾写真家の味方なのだ。

今回のレビューで驚異的だったのはスワンソンさんの精力的な活動ぶりだった。一日目のポートフォリオビューイングの時に彼女は自分がレビューする写真家をのぞいた全写真家のポートフォリオをチェックしていた。

そして二日目の僕のレビューの時には、驚いたことに事前に僕のホームページを丹念に調べてあり、すぐに今のホームページにかけている点を4つ指摘してくれた。

そしてまるで僕の心の中や無意識の願望まであぶりだすように、あなたのゴールを実現するためにはこういうことをしたほうがいい、ということを具体的に示してくれた。

彼女の指摘を受けると僕の中では、あ、なるほど、と具体的なイメージがわき上がってくる。

ポートフォリオレビューに参加するレビュアーにギャラは出ない。彼らは無償で参加する代わりに自分のマーケットに必要な人材発掘をする。

しかし、20分のレビューの時間以外の時間を使ってここまで丹念に自分がレビューする写真家の情報を調べてくる人は他にはいない。

彼女の個人コンサルタントは1時間300ドルするのだが、多数の写真家をクライアントに持ち様々な写真家から支持と賞賛を得ている。
そして彼女も写真大好き人間なのだろうと思う。最後の日のレクチャーでもレクチャーを録音しながら熱心に質問をしていた。

僕は彼女にぜひ日本に来てもらいたいと思っている。そしてより多くの日本の写真家と彼女が出会えることを願っている。

Mary Virginia Swansonさんホームページ

David Bram氏とFraction Magazine

レビューセッション一日目の二番目に見ていただいたのが、昨年の5月にできたばかりのオンラインマガジンFraction Magazineの共同創立者David Bram氏だった。

現在アメリカではオンラインで写真を見せるサイトがさかんになっている。レビューサンタフェと提携しているFlak Photoもそうだし、Hey Hot Shotもそのひとつだ。

その中でもFraction Magazineはオーソドックスな雑誌スタイ
ルをオンラインに持ち込んでじっくりと写真家の作品を見ることができる点で断然好感がもてるマガジンだ。

David Bram氏は僕の福福星のポートフォリオを見て、なにか目を輝かせていた。
彼曰く、僕の好みと全然違うんだけど、なにかエッジィなかんじ、でも汚いかんじじゃないし、いやな気持ちにもさせない。色もきれいでコマーシャルをやってたからテクニックもいい。もっと大きくするとインパクトがあるんじゃない。

と感想を話してくれた。


その場でFraction Magazineは2ヶ月ごとに作家を紹介するので9
月頃には紹介出来る、といってくれた。

そして次の日の朝にはもうブログでこんな写真家にあって作品を見たよ、近いうちに紹介するから、と書いてくれた。




そのブログをその日の朝にすでにチェックしていたMary Virginia Swansonさんのレビューの時にはいきなり「アンビリーバブル、よかったね」といってもらっ
たのだが、こちらはブログをまだ見ていなかったのでまたもや眼を白黒させていたものだ。ほんとにアメリカの口コミ力はすごい。

Fraction Magazineのメイルリストは5000件くらいあって、そのほとんどがアメリカのギャラリーと美術関係者なのだそうだ。つまり、Fraction Magazineにとりあげられると5000件の関係者にメールでお知らせが届く。

David Bram氏は新しい写真家と写真の関係者を結びつける仕事をしているのだ。それも無償で。

彼は本当に写真が大好きな写真星人なのだろう。レビューの間もどんどんフォトグラファーたちとコミュニケーションしているし、最後の日のCow Girl の集まりにもちゃんと顔を出してみんなと楽しそうに話し合っている。もちろんこんなレビュアーは彼一人だ。


最近ではFraction Magazineのことがニューヨークタイムズにも取り上げられて、レビュアーとしての知名度もあがっているそうだ。

以前にも書いたが、写真界はこのような本当の写真好きの人の活動に支えられて発展する。きっと彼は写真界の重要人物になっていくだろう。


Fraction Magazine ホームページ


Flakphotoホームページ

Hey Hot Shot ホームページ


 

2009年6月13日土曜日

Susan Spiritus Gallery

6日の夜 Cow Girlから戻ってくると部屋のドアにメッセージがはさまれていた。
初日に声をかけてきてくれたスーザンさんからのメッセージだった。電話したんだけど返事がなかったから明日私たちが出発する前に話があるから会えないか、というメッセージだった。

どうやら、僕とセリーンの写真を彼女のギャラリーで売って
みたい、という話のようだ。
彼女はレビューの合間にしっかり僕とセリーンの写真をみてくれていた。自分が見たあとは一緒に来ていた彼女の夫にも見せて意見を聞いていた。

翌日の朝にもう一度ポートフォリオを見せて、その中からこれと
これというように写真のセレクトをしてシッピングしてくれ、という話になった。写真の大きさとエディション、値段などについてもきちんとアドバイスをしてくれた。

僕のポートフォリオはA2サイズでつくったものだが、その大きさがいいということだったが値段は500ドルでは彼女のギャラリーで扱うには安すぎるという話だった。

なにか話の展開が急すぎて実感がわかない。

それと日本では不景気の影響でみんななんとなく不景気だからなー、と後ろ向きの感覚になりがちだが、ここアメリカではそんな雰囲気は全然感じなかった。とに
かくみんな前向きで明るい。
地元のVerve GalleryのディレクターJennifer F. Schlesingerさんに伺った話でも不況の影響は高額の作品には少しあるが、普通の値段帯の作品には影響はない、という話だった。
彼女のレビューを受けたときに、僕の作品には全然興味なしという
ことで話が10分で終わってしまったのでアメリカの写真の状況などについて雑談をしていたときに聞いた話だ。

スーザンさんのギャラリーはアンセル・アダムス、細江英公、ハリー・キャラハン、ポール・カポニグロ、イモージン・カニンハム、アンドレ・ケルテス、ラルティーグ、ジェリー・ウェルスマン、エドワード・ウエストン、渡邉博史といったビッグネームの写真家をあつかっているギャラリーでレビュアーを調べていたときにこんなギャラリーの人にあっても関係なさそうだな、と思っていたところである。


今回の話は細江さんの力によるところがなんといっても大きいので、この話が非常なるビッグラックだとしても問題はこれからどれだけがんばって活動して
いけるか、ということになるだろう。

プリントのエディションの管理なども含めて日本に帰ってからやることがたくさん出来てしまった。サンタフェで出会ったすばらしい人たちはみんな行動が素早
い。
ぼんやりして行動がのろい僕にとってこれは大変な試練になるだろう。

そうこうしているうちに、レビューサンタフェで出会った4人のフォトグラファーの作品をとりあつかうのでよろしく、という Susan Spiritus Gallery のニュースレターがメールで届いた。

スーザンさんは正式のレビューの合間にも精力的に参加し
たフォトグラファーの作品を見ていた。そして彼女のギャラリーは個人客よりも会社のお客のほうが多いともいっていた。レビューサンタフェは彼女にとっても仕入れの草刈り場だということなのだろう。やはり日本の写真現場とは全然違うということなのだ。

Susan Spiritus Gallery ホームページ



本番のレビューの合間にも熱心にポートフォリオを見るスーザン。
福福星のポートフォリオの中からギャラリーで扱う作品をセレクトしているところ。
セリーンの和紙にプリントした作品も気に入られてギャラリーで扱われることになった。

レビューサンタフェ 最終日

レビューサンタフェの最後の日のイベントはNew Mexico Museum of Artで行われるレクチャー。

キューレーターのCharlotte Cotton, Radius Books という出版社の編集者Darius Himes, New Mexico Museum of Artの写真のキューレーターKatherine Ware によるトークショーだ。
最近のデジタル化による出版状況の変化。オンラインマガジンの台頭とオンデマンド写真集の台頭によって出版文化が急激に変化していることなどがテーマになった。

この話は、インターネット上での寄稿が元になった本Words Without Picturesをベースに語られていた。


とにかくもアメリカのネット社会は急激に変化していて全ての新しいことがネット上で次々に現れている。よくもあしくもネット社会の変化は我々のライフスタイルにすさまじい変化をもたらすだろう。


Cow girl にて

フォトオークションが終わったあとは、参加したフォトグラファーがさそいあって地元の酒場Cow Girlに集結。

とにかくアメリカ人はハイハイ文化ともいえるくらいにすぐに声をかけあって仲良くなってしまう。もちろん他の国からきた人もおんなじだ。今回のレビュー
では海外からの参加者も数名いた。
ドイツのミュンヘンからきた男は風景写真を撮影してプリントを売って暮らしているという。ただアルルのフォトフォリオレビューに持って行くと、おまえのは写真じゃないと酷評されるそうだ。フォトショップの後処理で加工しているせいかもしれない、という。

ロンドンからきたカート君はめちゃ明るい香港人。ルバーブルバーブにいって雑誌に取り上げられたり展覧会をオファーされているという。みんな有名なレビュアーに見てもらいたがるけれど、案外そうじゃない人のほうが可能性があるんだよ、というのが彼の意見だ。

オーストラリアのパースからきたグラハム・ミラー氏は普段は獣医の仕事をしているそうだ。彼の写真も技術的にも個性もすばらしいものがある。もちろん成功したら写真一本でやりたい、といっていた。

変わっていたのはシンガポールから来たどこからどう見ても
そのへんのおっちゃんにしか見えない男の人。彼はすごくパワフルな人でもうどんどんどんどん話しかけてくる。旅行の写真がほとんどで中国やらインドやらに行って撮ってきた写真だ。インドではトランスベスタイトの写真を撮影していてセックスシーンまであるほどプライベートに入り込んでいる。何せ押しが強いからぐんぐんと中に入っていくのだろう。
僕にもオーロラセレクトのディレクターがいいぞ、仕事くれるぞ、とさかんにすすめられた。 残念なことに時間が合わずあえなかったのだが。

その他にもメキシコからきた韓国人の女の子、スイスか
らきた男性もいた。

もちろん圧倒的に多いのはアメリカ各地からやってくる人。写真を専業でやっている人もいるが、ウェブデザイナーだとかウェディングフォトをとっているひとなどもいるし、写真学校の先生もいる。とにかくいろいろな人、年齢層もまちまちだけどそんなことは誰も気にしていない。

Cow Girl でみんなでわいわいやっていたときに隣に座っていた女性でやたらハイテンションでおしゃべりしまくっていた人がいた。あとで聞いたら、
その女性が今年のプロジェクトコンペティッションでファーストプライズに輝いたCori Chandler-Pepelnjakという人であった。
これはまた聞きなので正確ではないかもしれないが、彼女はミネアポリスに住む女性で最近二人の写真家のワークショップで写真を学んだそ
うだ。そして毎週末ミネアポリスからニューヨークに通って撮影を続けた。撮影していたのはjojoという14歳の女の子。彼女の母親は、水商売で若い男が好きで生活が荒れている。そんな母親の元での彼女のナイーブな生活のドキュメントが彼女の作品だ。 

こんな風にアメリカではプロの写真家ではなくても作品さえよければチャンスはいくらでもめぐってくる。そして人生のどの時点からでも写真家としてのキャリアをスタートさせることが可能なのだ。








2009年6月11日木曜日

レビューサンタフェ4 Porofolio Review & Photo Auction

レビューセッション2日目。だいたい要領はわかってきたのでスムースになってくる。スワンソンさんのアドバイスで、まず簡単な自分の略歴を伝えて、それから自分の目標(例えば写真集を出したいとか写真展を開きたい、雑誌に発表したい等)を伝えてからポートフォリオを見せてアドバイスをもらう、という手順だ。

この日はMary Virginia Swansonさんのレビューが非常に有益だった。彼女のことについては後ほど詳しく説明したい。

1日目、2日目とも通常のレビュアーの他に5人のレビュアーがFirst come First serve(先着順)方式でエクストラのレビューをやってくれた。

全てのレビューが終わったあとはまたもやCenter for Comtemporary Artの会場に行ってPhoto Auctionにたちあうことになる。

これは地元の人たちのチャリティーオークションで、レビューに参加したフォトグラファーや前回までのレビューに参加した人の中から活躍している人の作品などが取り上げられていて、ライブオークションと紙にビッドしていく方式の両方のオークションが行われた。

今回はレビューサンタフェを主催するCenterからのサンキューメールにオークションの出席者が少なくて申し訳なかったというコメントがはいっていたほど、参加者が少なかったようだ。
それでも、ライブオークションを見ていると、数万円から十数万円の額の単位で競り落とされていくので、これも日本ではちょっとあり得ないんじゃないかなぁという感覚だった。

僕はSkyEarthの作品を2枚和紙にプリントしたものを掛け軸仕立てにして出品した。サンタフェに行く前に細江さんの事務所で少し小さなサイズの掛け軸があるのを見て、お、これはかわいいなぁと思いさっそく摺り師の木田さんの所に相談しにいって制作したものだ。

主催者とのメールのやりとりで一枚500ドルにしたつもりが勘違いされて2枚セットで500ドルになってしまっていたので、しまった、と思ったのだがまあ後の祭り。
それでも250ドルからのビッドが5回くらい更新されて300数ドルで競り落とされたので、まあよしとしなければいけないだろう。

なにせ参加者が少なかったので、今回のレビューに参加したフォトグラファーの作品はほとんど売れ残ってしまったのだからラッキーな方だ。

作品を競り落としてくれたのは昨日のポートフォリオビューイングでも熱心に僕の作品を見てくれた夫妻で地元の彫刻家ということだ。ギャラリーも持っているそうでそこに飾るつもりだという話だ。



物のオークションのような臨場感で行われるフォトオークション。
今年参加した写真家の作品のオークションは値段を書いた張り紙にベットを書き込んでいく方法でオークションされた。


僕の作品を競り落としていただいたのは地元の彫刻家ご夫妻。ご自分のギャラリーもあるのでそこに飾る予定ということだ。

レビューサンタフェ3 Portfolio Viewing

レビューサンタフェの第一日目のセッションは早めに終わって、フォトグラファーたちはCenter for Contemporary Artという場所に移動する。

今日はここで、全フォトグラファーのポートフォリオを展示してレビュアーに見てもらったり、一般にも公開されるので地元の人たちにみてもらうことになる。
体育館みたいな広い会場にはテーブルがセッティングされており、それぞれのフォトグラファーの名札がおいてあって1メートル半くらいのスペースに自分のポートフォ
リオを展示することが出来る。

僕もいそいそと自分のブースにポートフォリオを並べる。今回審査には間に合わなかったが和紙にプリントしたポートフォリオを持参してきた奥様のCeline Wuの作品もついでに並べた。僕が英語がだめなので、3カ国語をしゃべれる彼女の存在は今回本当にありがたいものだった。彼女がいなかったら、レビュアーの人たちや仲間のフォトグラファーたちとの交流もままならなかった。

レビューの合間に見せあってはいるものの100人のフォトグラファーたちの作品が一同に並べられた姿は圧巻である。
レビューサンタフェはどちらかというとドキュメント性の強い作品が多いように感じていたのだが、こうして並べられている作品を見ていると実に様々なタイプの作品があっておもしろい。
2人の競作で一点だけの写真のインスタレーションにな
っているもの、古色蒼然とした箱にジオラマというか何というかのぞき込まなくては見えないようなオブジェを制作してきた人、またパノラマ上にフォトショップでつなげた横長の作品も何点か目についた。

プリントはどちらかというと、インクジェットの作品が多いようだ。壁には明日のフォトオークション用の作品も飾ってあってとにかく自分のポートフォリオの前にいるよりもいろいろのぞきに行きたいな、という衝動にかられる。

コンサルタントでレビュアーのMary Virginia Swansonさんは精力的に全員のポートフォリオに目を通している。僕の所は明日のレビューがあるというと、じゃあ明日ね、ということで、横浜で準備中のフォトフェス&ポートフォリオレビューのプレイベントでぜひ来ていただきたい、というお話をした。彼女からは前向きなお返事をいた
だいている。

昼間に見ていただいたオンラインマガジンFraction Magazine のDavid Bram氏も登場してCeline の作品を見てもらう。彼の奥様も1歳のお嬢様をだ
きかかえて一緒に見てくださった。

レビューサンタフェでは事前に参加するフォトグラファーの作品をオンラインで見ることが出来るので、自分の気になるフォトグラファーの作品を見に来るレビュアーもこの一般公開のPortfolio Viewingでみることができるわけだ。
僕の所にもSanta Barbara Museum of ArtのキューレーターKaren Sinsheimerさんがわざわざ見に来てくれた。
いくつかのやりとりがあった後に彼女から出た質問はこ
の写真はいくらなのか、という質問だった。渡邉博史さんからもアメリカでは必ずフォトグラファーにおまえの写真はいくらなのか、と聞かれると聞いていたので何となくは考えていたのだが、これは難しい質問だ。
何せこれまでプリントをプライマリー市場で売ったことがないわけだから値段のつけようがない。自分の評価もよくわからないわけで、日本では横木安良夫さんですら最初は25000円からということでブリッツギャラリーで販売している例もある。

まあ、500ドルくらいかな、と曖昧な返事しかできなかった。

他にもサンタフェには地元に熱心な写真愛好家やアーティストがたくさんいるらしい。次々にやってきては見せろ見せろということになり3時間のPortfolio Viewingはずっと立ちっぱなしでかなり疲れる体験であった。


レビューサンタフェに参加した100人の写真家の作品一覧


ポートフォリオビューイングの会場入り口


2人の写真家のインスタレーション作品。



Aline Smithsonさんはロサンジェルスの写真学校の先生だそうだ。フォトコンペの審査員もしているような人。
Alineさんの作品の中にシノワズリー調の僕好みの作品が。




プレゼンにノートパソコンを使う人も多くなっている。



体育館のような会場に100人の写真家のポートフォリオが並べられるのはすごい迫力がある。

壁面には翌日のオークション用に参加した写真家の作品がならべられている。


Fraction Magazine のDavid Bram 氏と奥様と愛称ジェリービーン・かわいい赤ちゃん。