6月1日(今日)から始まるギャラリー21でのグループ展の展示のためのセリーン・ウーの作品を染め刷り師の木田俊一さんの仕事場に昨日受け取りにうかがった。ミュンヘンで展示するための掛け軸の作品もできあがっていた。
セリーン・ウーの作品は全て和紙にプリントされている。インクジェットプリントが盛んになってきて、インクジェットプリント用の用紙はものすごく多様な展開をしているし、和紙もたくさんの種類がある。ただインクジェットプリント用の和紙はたいてい表面にインクジェットのインクの発色をきれいにするためにコーティングがほどこされている。
木田さんは和紙の風合いとインクを和紙のなかにしみこませるためにわざとコーティングを施していない和紙への刷りを試みている方だ。僕たちのように銀塩写真のプリントになれて
いるものからみると最初は木田さんの和紙プリントはねむいかんじがして、ダメプリントのようにみえてしまう。それが、だんだん目がなれてくると、なんともいえない柔らかいトーンとテクスチャーがみえてくるようになる。 またカラー作品だと、発色が通常のインクジェットプリントとは全く違うので仕上がりを前にして、この発色でOKなのかどうか大いにとまどうことになる。
木田俊一ウェブサイト
僕のSkyEarth the Last Paradiseも掛け軸に仕立てた作品を作ったのだが、このときもたくさんの和紙の種類でサンプルを作ってみた。
結局最終的に、第9代目人間国宝岩野市兵衛さんの手漉き和紙を使うことにした。セリーン・ウーの作品も全てこの和紙でプリントされている。
写真のプリントになれているものの目から見ると、市兵衛さんの和紙に刷られた自作を見るとかなりの戸惑いを覚えることになると思う。それが不思議なことにだんだん目がなれてくるとその独特のトーンとテクスチャーがなんとも心地のよいものに感じられてくるのだ。
お台場にあるギャラリー21の回廊の展示スペースはいつみてもすばらしい雰囲気がある。坂川栄治さんのこけらおとしの写真展以来この空間は日本の中でも指折りの写真展会場として君臨している。セリーン・ウーの和紙プリントもとてもよくマッチしているように思えた。
ちょうど西山功一さんも展示の準備でいらっしゃっていたので、少しお話しする機会を得た。西山さんの作品はオープンポートフォリオレビューではよく見ることができなかったので、今回まとまった作品を拝見したわけだが、撮影条件の光に対するこだわりが明確で、写真という世界の成立条件がひとつの作品コンセプトにもなっているように思えた。とても気持ちのいい作品である。初期の畠山直哉さんの作品にも共通点があるように思えたので、そのことを質問したら畠山さんに見てもらってとても喜ばれたということだった。
西山功一ウェブサイト
とにかく横浜でのオープンポートフォリオレビューがこうした形で実を結んでいることがとてもうれしい。まさに僕が夢見た世界だ。
オープンポートフォリオレビューにレビュアーとして参加していただき、すばらしいかたちでコレスポンダンスしてくださった太田菜穂子さんにはお礼のいいようもないほどに感謝の気持ちでいっぱいである。
ギャラリー21
2010年6月1日火曜日
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