2014年12月3日水曜日

ブレダフォトインターナショナルフェスティバル


2014年9月11日から10月26日までの46日間、オランダの南、ベルギーとの国境にほど近い小さな街ブレダでこのフェスティバルは2年に一度開かれています。2006年から始まり、今年で5回目の開催を迎えたそうです。
オランダのフォトマーケットといえば、まずアンシーン・フォト・フェアが日本では名が知られています。そしてFoam Magazineという写真雑誌のことも少し伝わってきています。しかしブレダフォトインターナショナルフェスティバルについては、まったくといっていいほど日本では知られていないようです。 
2014年のブレダフォトインターナショナルフォトフェスティバルには楢橋朝子・フォトグラファーハル・権平太一・伊藤計一・永田陽一の5名の写真家が参加しました。また同時期に行われたサテライト企画であるゴッホ生誕の地にちなんだ写真展には田中亜紀と大森克己が参加しました。
ブレダフォトに参加した楢橋さん以外の4名の写真家はオランダの写真の教授であるバス・ウィルダーBas Wildersさんのポートフォリオレビューから選ばれています。このレビューは今年2014年の3月に冬青社の高橋国博さんの企画で行われました。約20名の写真家が参加。その後バスさんがブレダフォトにプレゼンをしてくださり、その結果4名の写真家がブレダフォトに参加できることになったわけです。バスさんはボランティアで参加する写真家との連絡、展示のプラン等々までを事細かに実行してくださりました。また、冬青社の写真集のデザインを担当している石山さつきさんはオランダに留学していた経験があり、バスさんとの連絡を助けてくださったり現地でのコーディネートに尽力してくださいました。
高橋国博さん、バス・ウィルダーさん、石山さつきさんの熱い情熱があってこそ実現したものなのです。

今年のブレダフォトのテーマは「ソングス・フロム・ザ・ハート Songs from the Heart」で21世紀のロマンティシズムを標榜しています。最初音楽のニューロマンティックスかな、何で今頃と思ったのですが、現地に行ってみるとこれは実に深いテーマだったことがわかりました。画家のカスパー・ダヴィッド・フリードリッヒに代表されるドイツ・ロマン派から脈々とつながるロマン主義芸術が写真にどううけつがれていて、そしてこれからどうなっていくのだろうか、ということが今年のブレダフォトのテーマなのでした。フォトフェスというと、社会的な問題やある特定の地域や国がテーマになることが多いのですが、今年のブレダフォトのテーマはアートの本質の部分に切り込むするどいテーマでした。
カタログの中にある参加写真家のひとりトッド・ハイドTodd Hidoのステートメントの中の言葉がかなりこのテーマの核心をいいあてています。「彼は自分のことをコンセプチュアル・アーティストだとは考えていない・・・コンセプチュアルな考え方が尊重されすぎていると思うんだ。その反面、美はむしろ醜い、という言葉と同義になってさえいる。でも僕は美を求めているし、情熱を求めているんだ。」
フォトジャーナリズムの衰退やコンテンポラリーアートとしての写真の台頭、そしてフォトショップなどによる写真のマニュピレーションが現代の写真の潮流をコンセプチュアルなものにかたむけ、そこにある現実世界を切り取ってくる、という写真のもっとも核心的な衝撃性から写真家を遠ざけているという傾向があるのは確かなことだろうと思います。シャッターを押したその瞬間にカメラの前にあった現実が写ってしまうということ自体はその後いくらフォトショップなどのマニュピレーションがあったとしても写真の本質として重要なことに代わりはないことです。後からいくら手を加えていったとしてもその要素がなくなることはないでしょう。なによりも、なぜ現実世界を写真という平面にするのかということが問われるべきでそこにこそ美と発見という写真の重要な要素がひそんでいるはずです。
「自然からその公然の秘密を打ち明けられ始めた人は、自然の最もふさわしい解釈者である芸術への抑えがたい憧れを感じる。」とはゲーテの言葉ということですが、ルドルフ・シュタイナーが言うように、僕たちが感じている自然の外面は自然の一部にすぎず、自然の中にある秘密を解き明かすことこそ芸術体験の重要な鍵なのであり、メルヘンの童話の中の世界のごとく、茨に覆われて皆が死んだように眠ってしまっているお城であるとか、呪いにかけられて小鳥になっている少女たちであるとかのように、自然にかけられている魔法をとくことが芸術の役割なのだと思います。そこに美の発見もあるのです。 21世紀の今、まさに写真がそういう役割を担っていることは間違いないでしょうから、このブレダフォトのテーマは写真界に問われなければならない重要なテーマだといえるでしょう。

こんなことを考えたのもブレダフォトに参加して現地にいったことがきっかけで、フォトフェスというものがいかに写真家にとって大事かを痛感しました。この重要テーマをかかげたブレダフォトに参加できてほんとに良かったと感じています。

(フラクションマガジンジャパン掲載のブレダフォトの主催者の一人・ヒールト・ファン・エイクさんのインタビューもぜひご参照ください。)



参加した写真家の宿泊先となったマストボスホテル。ブレダ市のダウンタウンとは離れた場所にある古風なホテルで週末ともなると食事をする人でにぎわっていた。目の前が森という絶好のロケーション。
マストボスホテルの前にある森の奥には中世のお城があった。


現地到着翌日にフォトグラファーハルさんとともにインタビューを受けた。ブロガーのインタビューときいていたのだが、いってみるとなにやらものものしい雰囲気でびっくり。

ハルさんは電子辞書、僕は英和辞典を持参していたのだが動画なのでいちいち辞書を引いているヒマもなく、ハルさんはそれでもていねいに答えていたのですが、ぼくはやぶれかぶれでバカみたいな受け答えになっている。

 


ブレダフォトフェスのニュースペーパー。現地に行ったら僕の写真が表紙になっていたのでびっくり。

永田のインスタレーションはクラブソロという普段はコンテンポラリーアートを展示する場所に展示してあった。

クラブソロのオーナー。とても気さくな人だった。
クラブソロの2階ではMartha Kammingaという地元の写真家のインスターレーションが展示されていた。
ポスターはトッド・ハイドの写真が使われている。。
トッド・ハイドの展示の一部

トッド・ハイド。このモテルの写真はデジタルでしかうまくいかないと話していた。
トッド・ハイドのレクチャー。自作の成立をものすごくていねいに解説していた。撮影するときはドキュメントの写真家のように、仕上げるときは画家のように、というような説明を影響を受けた画家の作品を見せたり、生の写真と仕上がった写真を見せたりして実に懇切丁寧なレクチャーだった。
トッド・ハイドなどが展示されているMOTIという美術館。

カスパー・ダヴィッド・フリードリッヒに影響を受けた数々の作品の展示。


フォトグラファー・ハルさんは招待作家なので渡航費や滞在費を提供してくれる。全長6メートルの巨大プリントの前で。

現地のボランティアの人に質問されている。ツアーガイドの参考にするようだ。


現地の写真家Wiesje Peelsの作品。モダンな建築の住宅街の中に展示されている。

ベルギーの写真家Bert Danckaertの作品。

Tom Hunterの作品



Jakub Karwowskiの作品。彼は権平さんの作品に興味をしめしてプリントの交換をした。

Alec Sothの展示

オランダの写真家Koen Hauserの展示

オープニングパーティでハルさんと冬青社の高橋さんがプリンターに話を聞いている。巨大プリントはヨーロッパのメーカーの機械を使っているそうだ。

中央はRoel Stavorinusさん。インタビューの編集をしてくれた人。名前の発音が難しすぎて最後まで発音できなかった。オランダ人は皆とても親切なのだが、彼もめちゃくちゃ親切な人。

怒濤の第一日目を終えて、遅い遅い晩ご飯にありつこうとしている日本からのご一行様。


 Ed Templetonのインスターレーション

ベルギーの写真家Jeroom Vanderbekeの作品

ブレダのダウンタウン

オランダの写真家Martijn van de Griendtのインスタレーション

オランダの写真家Martijn van de Griendtの作品

楢橋朝子さんの展示


Kris Vervaekeのインスタレーション

ブレダの街にも運河が流れている。

サテライトのゴッホ生誕にちなむ展示。ゴッホの生家で行われた。

ゴッホの展示に参加した田中亜紀さん。

田中亜紀さんの作品に興味を示したぼうや。

フェルメールの国の典型的な美人ってどんな人なんだろう、と思いながら勝手にオランダ美人ということで撮影させてもらったのだが、彼女も写真家でアンシーンではNew Talent Awardに輝いた一人。彼女はゴッホが毎晩駅から自宅まで通った道の風景を撮影した作品を展示していた。

ゴッホが埋葬されている墓地
バス・ウィルダーさんのレクチャーで急遽参加した全員の写真家も一緒に登場ということになってミーティング中。


ブックショップのあるスペースでのバスさんのレクチャー風景
権平太一さんの展示場所はSBKギャラリー

プログラム上の都合でオープニングパーティが午前11時からになり、人の集まりを心配した現地スタッフがロールスロイスでお出迎え・赤絨毯で登場という粋なはからいをしてくれた。

英語で挨拶をする権平さん。前夜に田中亜紀さんのアドバイスで書き上げたものをカナにして読み上げた。しかし説得力のあるスピーチで皆の共感を得て盛大な拍手で盛り上がった。


パリに住む息子さんもかけつけてくれて、津軽三味線を披露。


ハルさんの新作『雑乱』

サイン会風景
永田の超高い写真集も何とか間に合ってブックショップにおいてもらった。
オランダの写真家Sven Feirzと展示作品

ベルギーの写真家An-Sofie Kesteleynの作品。アメリカで開催されるバーニングマンを取材した作品





参加した写真家のために催されたディナーパーティ。田中亜紀さんの隣は主催者の一人ヤン・スヒャーラークンスJan Schaerlackensさん。

Wayne Lawrenceの作品

野外トイレも写真で覆われている

運河を行くボートツアーに参加した地元のアマチュア写真家のご一行
冬青社で行われたバス・ウィルダーさんのポートフォリオレビュー風景





2014年5月1日木曜日

ニューヨークのフォトギャラリー

さほど広くないマンハッタンを中心としたエリアのなかで老舗ギャラリーが集まる57丁目、大型ギャラリーがひしめくチェルシー、新興のギャラリーがあるブルックリンのダンボ地区、そして新しいエリアとして注目を集めるミートパッキングディストリクトやロウアーイーストサイド、イーストビレッジなどがある。

ニューヨークに行ったらまずICP(インターナショナルセンターオブフォトグラフィー)を訪ねてみよう。ここにもギャラリーがあり、さまざまな写真のワークショップが開かれている。ここでギャラリーのガイドブック Photographyを買い求めると、現在開催中の写真展やギャラリーガイドがエリアごとにでている。
どのギャラリーを訪ねても気軽にはいれるし、写真の値段とエディションはカウンターなどにおかれているカタログに書かれていることもある。
57丁目とチェルシーくらいなら1日あればだいたいまわることができる。余裕があればガゴシアンギャラリーやペース・マッギルギャラリーなどの大手のコンテンポラリーアートギャラリーもついでに訪ねてみるといい。

また写真集専門の本屋さんであるダッシュウッドブックスは必ず立ち寄りたい。運が良ければ写真家のサイン会が開かれていたり、フラクションマガジンジャパンにコラムを書いていらっしゃる須々田美和さんに会えるかも知れない。

(2010年10月取材)

 57丁目のフォトギャラリーはたいがいこうしたビルの上の階にある。

 Howard Greenberg Gallery。細江英公、植田正治、井津けんろう ウイリアム・クライン ダイアン・アーバス ビル・ブラント アンリ・カルティエ・ブレッソン ユージン・スミスといった錚錚たる写真家をあつかっている。
 Amador Gallery
Bonni Benrubi Gallery
Edwynn Houk Gallery
Bettina Rhiemsの作品を展示中。Edition 3~5で22000~32000ドル。
Laurence Miller Gallery
Hasted Hunt Kraeutler.チェルシーのギャラリー
Jeff BarkのLucifer Fallsを展示中。大きさは121x127cm, 127x161cmといった大型作品。Edition は5で14500~24000ドル。売れるのかなと思っていたが、ほとんどの作品が4まで売れていて驚いた。
Bruce Silverstein Gallery
Beyond COLOR. というタイトルでアメリカの50年代から70年代の作品を展示していた。
Julie Saul Gallery
Jeff Chien-Hsing Liaoの作品
Yancey Richardson Gallery.Laura Letinskyの”After All"を展示中。73x104cm, 93x134cm, 104x147cmの大きさでEditionは9のものが5000ドル
Aperture Gallery. Paul Strandを展示中。
Clamp Art
Santa FeやHoustonのレビュアーもつとめる仕事中のBrian Clamp
Sous Les Etoiles The Galleryはソーホーにある。
Soho Photo.ここは月一回レビューをして展示ができる写真家が決まるようだ。
Hei Hot Shotコンペや20x200をたちあげて有名になったJen Beckman Galleryもソーホーの近くにある。
Dashwood Books
Dashwood Booksの店内

デール・カプランさんに聞く

2010年にニューヨークなどのフォトマーケットを取材しましたが、レクチャーや雑誌などに掲載したためブログにアップしていなかった記事を順次あげていこうと思います。

彼女に現代の写真をとりまく状況についてお話をうかがった。


*ニューヨークには写真専門のギャラリーはどのくらいあるのですか。


写真専門のギャラリーは50 ~60軒くらいです。コンテンポラリーアートを扱うギャラリーまで含めれば100軒以上ありますね。
エリアでいえば、老舗ギャラリーが集まる57丁目、大型ギャラリーが集まるチェルシー、新しいギャラリーがあるブルックリンのダンボ地区がありますが新しいギャラリーはホイットニー美術館が移転予定のミートパッキングディストリクトやロウアーイーストサイド、イーストビレッジなどのエリアにも進出しています。


*写真のコレクターにはどんな方がいらっしゃるのですか。


大きく分けるとソフィスティケーテッドコレクターと呼ばれる伝統的なコレクターとヤングコレクターといわれるIT産業などに代表される若くして成功したコレクターがいます。
ロウアーイーストサイドなどにギャラリーが進出しているのはヤングコレクターが台頭してきたせいでしょう。
また今ではインターネットが発達してきたせいでスワンでも世界中からコレクターが訪ねてくるようになっています。


*コレクターは写真やアートのどんなところに魅力をかんじているのでしょうか。


普通たいがいの人はそれほどクリエイティブな生活をおくっているわけではありません。自分でなにかを創造することはなかなかできないのです。決して大きな作品がいいわけでもなく、小さな心に響くような作品でも作家がどんなことを訴えかけたいかが明確であれば、作家の志に共感して作品を購入するようになるでしょう。そしてValue of Life、生きていることの意味や価値観をそこに見いだすのです。


*20世紀はアーヴィング・ペンやリチャード・アベドンといった写真の巨匠を生み出してきました。21世紀の写真界のスターはどんなところから生まれると思いますか。


アベドンやペンはメディアを利用できたのです。20世紀は雑誌などのメディアの力がすごく強かったから。彼らはメディアの力を利用することでとても有名になりました。でもこれからは違うわね。インターネットが発達してきてメディアの影響力は弱くなってしまっています。
今後はギャラリーシステムを通じて写真界の次のスターを検証することになっていくでしょう。ファッション写真家も広告写真家もみんなこのギャラリーシステムにはいりたがっています。

(2010年10月取材/ デール・カプランさんへのインタビューは当時スワンオークションギャラリーで研修をされていた須々田美和さんのご手配によって実現しました。須々田さんが同席してくださり通訳をしてくださったことに感謝いたします。)


 デール・カプランさんはコレクターのためのレクチャーなども行っている。
 スワン・オークション・ギャラリーのDM
 写真のオークションは10月のメイン・オークションの他にも年に数回行われるようだ。