2015年7月6日月曜日

HK Photobook Fair



  数年以上前から香港の中心部の不動産はバブルの様相を呈するように上がり始めた。マンションでも億を超える物件でなければなかなか手に入らないらしい。古 い高層マンションも次第に取り壊されて、大手デベロッパーが開発するすっきりとモダンな街並みへと変化しつつある。新しい空港やディズニーランドのほうに 広がっていく郊外にもどんどんとおなじみの超高層マンションが続々建設されていく。ディズニーランドよりも香港人に人気のオーシャンパークにもインドや中 国本土からの観光客の団体がどっと押し寄せている。 

 そうした香港の隆盛にあわせるように毎年3月にはアートバーゼル香港が開催されている。今年は億単位のコンテンポラリーアートを購入するコレクターがあったとも噂されている。
HK Photobook Fairはアートバーゼル香港の開催される期間にあわせて禅フォトギャラリーを運営するマーク・ピアソンさんの企画で開催されることになった。ちょうど家 族の用事で香港を訪れることになっていたことから、急遽このフェアに参加させていただくことになった。
開催期間は3日間だったが、後半の2日間に 参加することができた。昨年から少しずつポートフォリオボックスや写真集など販売できるような商品づくりに取り組んでいたので、3点の作品を持参した。田 原桂一氏のプラチナプリントポートフォリオボックスは限定50部で28万円、セリーン・ウーの和紙プリントの絵巻も限定5部で26万円、永田の写真集はヘ キサクローム版で定価23000円のものを3冊持って行った。
他に参加したのはスーパーラボや冬青社、香港や台湾の出版社などで手頃な値段の写真集の出品が多かったので、まあ、とりあえず今回は作品を見てもらえればよしとしよう、というくらいのつもりで参加した。

  まだパブリシティ不足なのか、客足も少しずつなかんじだったが次第にフェースブックなどの口コミでひろがっていったらしく写真集好きの香港人がだんだんと やってくるようになって、一人で何冊も買っていく客もふえはじめた。こちらはセールスは期待していなかったので、交代でアートバーゼル香港を見に行ったり 気楽に構えていた。香港という街は世界中からいろいろな人が集まってくるところのようで、ブースに座っているとヒューストンフォトフェストで会ったヨーロ ピアン・フォトグラフィーを出版している写真家のアンドレアス・ミューラー・ポールが突然現れたり、スーザン・スピリタス・ギャラリーのスーザンの娘と大 学が同級生だったというプリントサービスなどを仕事としている人が現れたり、フラクションマガジンジャパンに掲載した写真家のヴィンセント・ユーがやって きたりとそれなりに思いがけない出会いを楽しむこともできた。

  会期後半になってくると、田原桂一のポートフォリオボックスを見せてくれという人や、セリーン・ウーの絵巻を見たいという人もでてきて見てくれるだけでも ありがたいな、ということでゆっくりと見てもらいながらなるべく商品の特徴も説明するように努めた。ところが驚くことに、じゃ、買います、というお客さん が現れてこちらがびっくりすることになった。以前にヴィンセント・ユーさんから香港人は物見高くオリジナルプリントもたくさんの人が見に来るけれどアート を買う習慣がないので売れない、と聞いていたからだ。購入したのはCMを製作する会社の監督さん、ファッションショーなどをプロデュースする人、ジュエ リーデザイナーといった人たちだった。

 結局持って行った作品は全部売れてしまった。なるほど、香港の好況はこのような人たちにアートを買う余裕を生み出しているのかな、と感じた。そしてその背景には中国本体の経済発展があるのだろう。
成熟社会に突入したもののパラダイムシフトに乗れずに停滞する日本の閉塞感とは全く違う上昇気流が香港には立ちのぼっているようだ。

フラクションマガジンジャパンのブース。東京ルマンドさんがウォン・カーウァイに敬意を表して「Fallen Angel」のミシェル・リーばり(ん、カレン・モクだった?)のヘアピースで登場したので、彼女にうちのブースに立ってもらってスナップ。


クリス・ショウのプレゼンテーション

ヒューストン・フォトフェストで出会ったドイツ人写真家のアンドレアス・ミューラー・ポール氏が突然現れた。

スーパーラボのホウキさんとクリス・ショウ
残り少ない在庫になったスーパーラボのブース

香港の写真家が飛び入りでゲリラ的な写真の展示



ナイーブな作品を展示していた香港の写真家のブース

冬青社のブースを見る写真家のヴィンセント・ユー氏


アートバーゼル香港に出展された写真作品をざっとスナップしてみた。ビル・ブラントのパースペクティブ・オブ・ヌード
ダイアン・アーバス
新正卓氏のフォトも出品されていた。
Tina Lechnerという写真家のバウハウスを思わせるような作品

アンリ・カルティエ・ブレッソン
トマス・ルフ
ロバート・メープルソープ
森村泰昌
ベッヒャー夫妻。写真はどちらかというと古典的な作品が多かった。
山口はるみや空山基の作品もあった。
メインスポンサーはUBS。子供のためのツアーをやっていた。