2012年2月28日火曜日

神戸のフォトギャラリーTanto Tempo

 神戸のフォトギャラリーTanto Tempoさんを訪ね、簡単なレクチャーとレビューをさせていただきました。

関西のフォトギャラリーや写真家はどんなかんじなんだろうか、まずは自分の目で見て見なきゃ始まらない、ということでの思いつき企画だったのですがTanto Tempoのディレクターの杉山さん、オーナーの山田さんのご好意で実現することができました。

2010年のヒューストンフォトフェストでアメリカのFraction Magazinenの創立者のデヴィッド・ブラムさんに相談して日本版をだすことの許可をいただいてから、昨年の7月にやっとのことで創刊にこぎつけた季刊オンラインマガジンFraction Magazine Japanなのですが、まだまだ一般に広く知られるまでにはいたらず、掲載作家をさがすのが一苦労なのです。
オンラインでのサブミッションはいつでもできますが、こちらはまだ応募が少なく、やはり自分の足と眼でさがすのが今のところ一番のようです。

アメリカでは自分の名前をつけたウェブのアドレスとポートフォリオを掲載したウェブがあるのは写真家の常識となっているようなので、応募方法もメールでウェブのアドレスを知らせて、ウェブのどのポートフォリオを審査してもらいたいのか、というごく簡単な方法で応募が可能です。
デヴィッドはさまざまなポートフォリオレビューのレビュアーとしても活躍していますので、掲載作家を見つける苦労はあまりないようです。というかむしろメールなどが殺到してとても全部には対応できないというのが現状のようです。
デヴィッドも最初は自分も日本版の作家のセレクトを一緒にやりたい、といっていたのですが、現在の日本の現状ではなかなかそこまでいきません。

25日夜に開催したFraction Magazine Japanレクチャー&レビューですが、神戸や京都からも熱心な写真家の方が集まってくださり、とても少ない時間でしたが皆さんのポートフォリオを拝見することができました。
レクチャーのほうは、写真家の方が中心だろうということで、欧米のコレクター、プライマリー、セカンダリーマーケットの紹介をしました。

Tanto Tempoの杉山さんからも神戸でフォトギャラリーを運営することの難しさなどをお聞きしましたが、設立4年で大変な数のオリジナルプリントを販売してこられた実績はすばらしいことだと感心します。オーナーの山田さんからは、販売実績はあってもそれでギャラリーの運営がスムースにいくまでにはいたらない、という悩みももれましたがぜひとも続けていってもらいたいものだと思いました。

Tanto Tempoは神戸元町の駅から数分のビルの中にあるギャラリーですが、はいってすぐに気がつくことは独特のやさしいアットホームな雰囲気をかもしだしていることです。これはオーナーの山田さんのキャラクターによるものではないかな、と思います。
東京のギャラリーは貸しギャラリーが多いということもあって、写真を見て、そこでゆっくりと写真のことを考えてさらには展示してある写真を買おうかどうしようか、という思考をめぐらすための受け皿がないようにも感じます。
 Tanto Tempoのよいところは展示スペースがあり、ギャラリー所有のオリジナルプリントや販売している写真集などがさりげなく置いてあるスペースがあり、さらにカフェスペースとそこに付随した本棚にたくさんの自由に閲覧することのできる写真集がおいてあることです。

オリジナルプリントを買おうというお客さんはユニクロで洋服を買うお客さんとはまったくちがうわけで、一枚のそれ相応の値がするプリントを買う前には、その作家はどんな作家でどんなことを考えてその作品を撮ったのか、とかプリントを買ったら自分の家のどこにどんな風に飾ろうか、とかあれこれと考える時間が必要です。
そんなことをギャラリーでお茶を飲んだり、写真集を見たりしてゆっくり考えたり、友人やオーナーさんなどとお話をしたりして考える時間を持てることはとても重要なことではないでしょうか。
コマーシャルギャラリーは美術館とはまったくちがうわけで、お気に入りになった写真やアートを所有できる楽しみを提供するところです。その楽しみをどのように提供できるのかということはこれからのコマーシャルギャラリーの有り様をもっと多様に展開していく鍵になるのではないかな、と感じました。 
これからの経済のマーケットはモノから心の消費へとパラダイムシフトの渦中にあるとかんじています。心の消費をうながすものを売るためのお店は単なるモノを売るお店とはちがったかたちになっていくんじゃないでしょうか。

Tanto Tempoは今後少部数の写真集を発行するリトルプレスもたちあげるそうで、そのスペースのためにカフェはなくなるそうですが、ぜひアットホームで初めて来た人でもそこでゆっくりできる雰囲気を維持していただけたらいいな、と感じました。

と、ここまで書いてみてTanto Tempoさんでスナップしてくるのを忘れてしまったことに気がつきました。Tanto Tempoさんのブログにもスナップがでているようなのでそちらからぜひご覧下さい。

アートディレクターで写真コレクターでもある坂川栄治さんの仕事場の壁。多数のコレクションをこんな風に飾っておくのも楽しい。
永田の写真を坂川栄二さんの仕事場に置かせていただいてインテリアにマッチする飾り付けを考えた一例。
額も写真にマッチするものをいろいろ考えてみると楽しい。
マットをしない額の例。最近は大きなサイズでノーマットのものが多くなってきている。

自宅に展示スペースが少ない場合は椅子の上に置いてみたり、床に直接置いてみたりしても楽しい。


我が家のリビングにある川田喜久治氏のオリジナルプリント。自宅に飾る楽しみは毎日写真と対話できること。
 
ヘルムート・ニュートンはPGIから購入した。
 
昨年のチャリティ写真販売の時に手に入れた渡邉博史さんのプリント
仕事場に自作を掛けておけばフレームの具合やマット、ガラス越しのテクスチャー、ライティングなどを検証するのに便利。