しかし、なぜこのような小さな街にこんなものがあるのだろうか。その辺をディレクターのハミダさんに聞いてみた。フォートコリンズは小さな街だがゆったりしていてゆとりがある。しかもロッキーマウンテンパークや北に行けばワイオミングのような自然が豊かな場所でもある。デンバーからもクルマで1時間という立地。つまり、都市と自然との中間地点にあってファインアートフォトを学んだり鑑賞したりするのにはぴったりというのである。
サンタフェもアルバカーキから1時間半の片田舎だが美しい街だった。しかも全米で3番目にアートが盛んな都市であるという。フォートコリンズもよく似た環境なのだ。
なによりも自然環境に恵まれていて、土地代も安いから、ニューヨークなどの大都市からもアーチストが移住してきて製作の場にしていることも多いらしい。
グーグルやアップル、スターバックスといった新興企業のお膝元は日本で言えば皆地方だ。ダウ平均の会社のなかでニューヨークに本社のある企業はわずか2社くらい、という。新しい発想で新しいことをやるのには土地代も安く、環境もよく、のびのびと働ける場所がいいに決まっている。
実際フォートコリンズに来てみるとその環境のよさに思わず身体がリラックスしてしまう。滞在中はハミダさんの家に宿泊させてもらっていたが、C4FAPまではクルマで5分というところ。それなのに目の前はゴルフ場と湖という立地だ。庭も広くて、ラズベリーやトマトやバジルを植えている。犬が2匹、猫1匹も同居している。若いジャクソン(犬の名前)はハミダさんの留守中はこの広い庭を駆け巡っているので運動不足になることもない。
近くには牧場やBerewry(小さなビール製造所)などがたくさんある。
またダウンタウンは歴史のあるオールドタウンでとてもきれいだ。ディズニーのスタッフが住んでいたそうで、ディズニーランドを作る際に街並みの参考にするので写真を送ったところすぐ採用になったそうだ。つまりディズニーランドの原型となった街ともいえる。
小さな街だが高級レストランから和食、タイ料理までいろいろなレストランもある。コロラドステートユニバーシティもここにあり、若者もたくさん住んでいる。
ディレクターのハミダさんと毎日いろいろな話をするうちに彼女の前の仕事が広告のディレクターであることもわかってきた。わりと保守的なアメリカの写真業界で僕の作品に注目してくれたのも彼女のそうした来歴にも関係がありそうだ。また彼女の父親もアート関係のディレクターの仕事をしていたそうで、家には父親のシュールレアリスムの影響を受けたとおぼしきセラミックアートがたくさん飾られていた。
広告のディレクター時代から世界を旅してきた彼女の発想はとても柔軟だし、毎日を楽しむことにもたけている。今年はサンタフェでのCenterの会議、ポーランドのフォトフェスティバル、ドミニカ共和国への個人旅行にいく予定とうれしそうに語っていた。
帰り際には、じつはThe Center for Fine Art Photographyという名称を変えようと思っている、と話してくれた。スーザン・スピリタスとのコラボをはじめ、ニューヨークのスール・エトワールのコリンヌ・タピアさん、クロンプチンギャラリーのデボラ・クロンプチンさんなどともこれからコラボレーションの予定があるそうだ。彼女らと話していく過程で今の名称が果たして適切なのかどうかが話題になったそうなのだ。
何度も言うようだがアメリカのファインアートフォトの市場はまだ保守的なところがある。ファインアートフォトといえばアンセル・アダムスが先ず頭に浮かぶというのが正直なアメリカの状況だ。しかし、もう時代はあきらかに次へと進行している。C4FAPもどんどん進化をとげようとしているらしい。新しい流れは地方から、がアメリカの定番。
僕も思わず、いいね、それ。フォートコリンズに世界中から新しい写真家が集まってくるようになるといいね、特にアジアからね、とエールを送った。





















